2019.03.30ブログ
法悦 2019年 4月
法 悦 4月号 823号
花を奉る 石牟礼道子
春風萌(きざ)すといえども
われら人類の劫塵(ごうじん)
いまや累(かさ)なりて 三界いわん方なく昏(くら)し
まなこを沈めてわずかに日々を忍ぶに
なにに誘(いざな)わるるにや
虚空はるかに 一連の花
まさに咲(ひら)かんとするを聴く
ひとひらの花弁 彼方に身じろぐを
まぼろしの如く視(み)れば
常(とこ)世(よ)なる仄(ほの)明りを 花その懐に抱けり
常世の仄明りとは
あかつきの蓮沼にゆるる蕾(つぼみ)のごとくして
世々の悲願をあらわせり
かの一輪を拝受して
寄る辺なき今日(こんにち)の魂に奉らんとす
花や何
ひとそれぞれの涙のしずくに洗われて
咲きいずるなり
花やまた何
亡き人を偲ぶよすがを探さんとするに
声に出(いだ)せぬ胸底の想いあり
そをとりて花となし み灯りにせんとや願う
灯らんとして 消ゆる言の葉といえども
いずれ冥土の風の中にて
おのおのひとりゆくときの
花あかりなるを
この世のえにしといい 無縁ともいう
その境界にありて ただ夢のごとくなるも 花
かえりみれば まなうらにあるものたちの御形(おんかたち)
かりそめの姿なれども おろそかならず
ゆえにわれら この空しきを礼拝す
然(しか)して空しとは云わず
現世はいよいよ地獄とやいわん
虚無とやいわん
ただ滅亡の世せまるを待つのみか
ここにおいて われらなお
地上にひらく一輪の花の力を念じて
合掌す
二〇一一年四月
大震災の翌月に
住職日々随想
第二次世界大戦の敗戦国はドイツ、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドなど、(あまり知られていませんが、イタリアは大戦終結の一カ月前に日本に戦線布告をし、戦勝国に連なっています。)数多くの国や地域がありますが、ほとんどの国が戦後処理を済ませ、相対した国々とも和解をしています。
ところが我が国では、周辺国に対する国家間の賠償こそなされてはいますが、未だ民事上の戦後処理が十分ではなく、周辺国とのギクシャクとした関係が続いていますし、何より日米地位協定に見られる、まさに米軍占領下にあるかのような、不平等な関係からも脱却できずにいます。
よく例として取り上げられるのが、ドイツと日本の違いです。
ドイツは日本と同じ敗戦国でありながら、周辺地域との和解を進め、現在では欧州における指導的な地位まで獲得しています。
一方の日本は周辺国との間で、虐殺の犠牲者の数などを巡って、未だに論争を繰り返していますが、ドイツでは、資料が焼かれはっきりしない犠牲者の数ではなく、ナチスがホロコーストで大勢の方々を虐殺した、という事実をこそ、事の本質と受け止め、ユダヤ人社会と和解することを優先してきました。
加えて戦争で被害を与えた国々と「教科書会議」を設立し、長年、ナチス時代に関する記述について、双方の国民が納得できる内容を確認する作業を、長年続けてきました。
そういったたゆまぬ努力によって、米国との地位協定も改善され、駐留米軍もドイツ国内法を遵守する義務があるという、独立国としての当たり前の姿を取り戻しています。
ところが我が国ではどうでしょう。戦後七〇年を過ぎても米国との地位協定は改善の兆しすらなく、まるで属国のような状態から脱してはいません。
犯してしまった過ちを過ちとして認める勇気を持てず、見たくないものは見ない、見ないものはないことにしてしまう。そういう意識の積み重ねによって、歴史的事実までもがねじ曲げられ、被害を与えた国々からの本当の信頼は得られてはいません。
戦後民主主義が米国によってもたらされたもので、日本人自らが思考し勝ち取ったものではないからなのか、理由は様々考えられますが、はっきり言えることは真の自立無くして、本当に和解することも連帯することも出来ないということです。
四月八日は花祭り。お釈迦様はお生まれになってすぐに七歩歩かれ、天地を指さして「天上天下唯我独尊、我れ世において無上尊となるべし」と獅子吼されました。天地は喜びに満ちあふれ、妙なる音楽が流れ、花びらが舞い、甘露の雨が降ったと伝承されています。
お釈迦様は私がこの世で一番偉いのだ、などと仰ったのではなく、「今ここに誕生したこの私の命というものは、何者とも比べる必要のない尊いものであり、それは誰にとっても変わらない普遍の真理である」と、差別と暴力が、当たり前のように
渦巻くこの世界に、求めるべき世界を示さ
れたと言えないでしょうか。
まさに命の独立宣言であり、真実の連帯を
開く真理と、尊まねばなりません。
四月の行事
4 日(木)午前10時半~ピラティス
9 日(火)午後2時~ 囲碁教室
12日(金)午後2時~ 門徒女性聞法の集い
18日(木)午後2時~ 仏教民謡踊りの会
20日(土)午後4時~ 祥月講・同朋の会聞法会
ご法話 武庫川念仏寺 土井紀明師
23日(火)午後2時~ 仏教コーラスの会
25日(木)午前10時半~ ピラティス
五月の行事
2 日(木)午前10時半~ピラティス
7 日(火)午後2時~ 囲碁教室
10日(金)午後2時~ 門徒女性聞法の集い
11日(土)午前9時~12時 大阪校区同朋大会
ご講師 真城 義麿師
16日(木)午後2時~ 仏教民謡踊りの会
18日(土)午後4時~ 祥月講・同朋の会聞法会
ご法話 円明寺 髙島 章師
23日(木)午前10時半~ピラティス
*本堂内全てイス席、床暖房完備、どなた様もお気軽に
花を奉る 石牟礼道子
春風萌(きざ)すといえども
われら人類の劫塵(ごうじん)
いまや累(かさ)なりて 三界いわん方なく昏(くら)し
まなこを沈めてわずかに日々を忍ぶに
なにに誘(いざな)わるるにや
虚空はるかに 一連の花
まさに咲(ひら)かんとするを聴く
ひとひらの花弁 彼方に身じろぐを
まぼろしの如く視(み)れば
常(とこ)世(よ)なる仄(ほの)明りを 花その懐に抱けり
常世の仄明りとは
あかつきの蓮沼にゆるる蕾(つぼみ)のごとくして
世々の悲願をあらわせり
かの一輪を拝受して
寄る辺なき今日(こんにち)の魂に奉らんとす
花や何
ひとそれぞれの涙のしずくに洗われて
咲きいずるなり
花やまた何
亡き人を偲ぶよすがを探さんとするに
声に出(いだ)せぬ胸底の想いあり
そをとりて花となし み灯りにせんとや願う
灯らんとして 消ゆる言の葉といえども
いずれ冥土の風の中にて
おのおのひとりゆくときの
花あかりなるを
この世のえにしといい 無縁ともいう
その境界にありて ただ夢のごとくなるも 花
かえりみれば まなうらにあるものたちの御形(おんかたち)
かりそめの姿なれども おろそかならず
ゆえにわれら この空しきを礼拝す
然(しか)して空しとは云わず
現世はいよいよ地獄とやいわん
虚無とやいわん
ただ滅亡の世せまるを待つのみか
ここにおいて われらなお
地上にひらく一輪の花の力を念じて
合掌す
二〇一一年四月
大震災の翌月に
住職日々随想
第二次世界大戦の敗戦国はドイツ、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドなど、(あまり知られていませんが、イタリアは大戦終結の一カ月前に日本に戦線布告をし、戦勝国に連なっています。)数多くの国や地域がありますが、ほとんどの国が戦後処理を済ませ、相対した国々とも和解をしています。
ところが我が国では、周辺国に対する国家間の賠償こそなされてはいますが、未だ民事上の戦後処理が十分ではなく、周辺国とのギクシャクとした関係が続いていますし、何より日米地位協定に見られる、まさに米軍占領下にあるかのような、不平等な関係からも脱却できずにいます。
よく例として取り上げられるのが、ドイツと日本の違いです。
ドイツは日本と同じ敗戦国でありながら、周辺地域との和解を進め、現在では欧州における指導的な地位まで獲得しています。
一方の日本は周辺国との間で、虐殺の犠牲者の数などを巡って、未だに論争を繰り返していますが、ドイツでは、資料が焼かれはっきりしない犠牲者の数ではなく、ナチスがホロコーストで大勢の方々を虐殺した、という事実をこそ、事の本質と受け止め、ユダヤ人社会と和解することを優先してきました。
加えて戦争で被害を与えた国々と「教科書会議」を設立し、長年、ナチス時代に関する記述について、双方の国民が納得できる内容を確認する作業を、長年続けてきました。
そういったたゆまぬ努力によって、米国との地位協定も改善され、駐留米軍もドイツ国内法を遵守する義務があるという、独立国としての当たり前の姿を取り戻しています。
ところが我が国ではどうでしょう。戦後七〇年を過ぎても米国との地位協定は改善の兆しすらなく、まるで属国のような状態から脱してはいません。
犯してしまった過ちを過ちとして認める勇気を持てず、見たくないものは見ない、見ないものはないことにしてしまう。そういう意識の積み重ねによって、歴史的事実までもがねじ曲げられ、被害を与えた国々からの本当の信頼は得られてはいません。
戦後民主主義が米国によってもたらされたもので、日本人自らが思考し勝ち取ったものではないからなのか、理由は様々考えられますが、はっきり言えることは真の自立無くして、本当に和解することも連帯することも出来ないということです。
四月八日は花祭り。お釈迦様はお生まれになってすぐに七歩歩かれ、天地を指さして「天上天下唯我独尊、我れ世において無上尊となるべし」と獅子吼されました。天地は喜びに満ちあふれ、妙なる音楽が流れ、花びらが舞い、甘露の雨が降ったと伝承されています。
お釈迦様は私がこの世で一番偉いのだ、などと仰ったのではなく、「今ここに誕生したこの私の命というものは、何者とも比べる必要のない尊いものであり、それは誰にとっても変わらない普遍の真理である」と、差別と暴力が、当たり前のように
渦巻くこの世界に、求めるべき世界を示さ
れたと言えないでしょうか。
まさに命の独立宣言であり、真実の連帯を
開く真理と、尊まねばなりません。
四月の行事
4 日(木)午前10時半~ピラティス
9 日(火)午後2時~ 囲碁教室
12日(金)午後2時~ 門徒女性聞法の集い
18日(木)午後2時~ 仏教民謡踊りの会
20日(土)午後4時~ 祥月講・同朋の会聞法会
ご法話 武庫川念仏寺 土井紀明師
23日(火)午後2時~ 仏教コーラスの会
25日(木)午前10時半~ ピラティス
五月の行事
2 日(木)午前10時半~ピラティス
7 日(火)午後2時~ 囲碁教室
10日(金)午後2時~ 門徒女性聞法の集い
11日(土)午前9時~12時 大阪校区同朋大会
ご講師 真城 義麿師
16日(木)午後2時~ 仏教民謡踊りの会
18日(土)午後4時~ 祥月講・同朋の会聞法会
ご法話 円明寺 髙島 章師
23日(木)午前10時半~ピラティス
*本堂内全てイス席、床暖房完備、どなた様もお気軽に
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